欧州研修に行ってきました !
場所:スェーデン、リトアニア、オーストリア
期間:2015.4.25–5.6
道場2期生、3期生11名と教職員で、2015年4月25日~5月6日にかけて欧州研修を行いました。
3か国12日間に渡り施設見学、大学交流、国際機関等訪問 一言に欧州といっても様々な歴史的背景、文化の違いも含め、驚きの連続。島国日本とは大きく異なります。
異なる面、共通の面、国や人種が異なっても根本は同じ事、また原子力は技術や科学だけではなく、世界が一つになって考えなければいけないものという事を改めて実感した研修でもありました。
様々なことを通し得た経験は、未来への大きな成長の種となりました。
1. スェーデン (SKB施設)
放射性廃棄物管理・処分を行っているスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社 (SKB社) のオースカシャム (Oskarshamn) にある (1) エスポ岩盤研究所、(2) 使用済燃料集中中間貯蔵施設 (CLAB)、 (3) キャニスター研究所、そしてOKG社の (4) オスカーシャム原子力発電所3号機を訪問し、この問題について学び考えました。また、自治体とSKB社より地層処分場等に関する (5) 地元住民との活動までの道程等について学びました。
原子力発電所から発生する放射性廃棄物や、運転を終了した原子力発電所からの多くの廃棄物等の処理問題は、原子力の平和利用の為には、避けることは出来ない重要な課題で、この件に関し重点的に学びました。
(1) エスポ岩盤研究所 (Äspö Hard Rock Laboratory)
エスポ岩盤研究所は、使用済燃料の直接処分に関して、地質環境調査、工学バリアの実証試験、操業のためのキャニスターや緩衝材の運搬・定置装置の実証試験等を精力的に研究開発してきた世界有数の地下研究所であり、地層処分に関連する技術や実証試験について理解を深めました。また、サイト選定までの経緯等についても説明を受けました。
放射性廃棄物の最終処分に至るまでの研究や実験施設の見学の中で、特にエスポ岩盤研究所では、実際に450mの地下坑道までにもぐり、そこで行われている実験設備や研究の様子などを体験することが出来ました。
(2) 使用済燃料集中中間貯蔵施設 (CLAB)
使用済燃料の受入れから水プールへの定置方法等について理解を深めました。
そこでの、技術の高さや精密さ実際の迫力には、目を見張りました。
(撮影禁止の為入手資料を使用)
(3) キャニスター研究所 (Canister Laboratory)
キャニスター研究所では、使用済燃料をキャニスター (日本ではオーバーパックに相当する) に挿入した後、蓋を遠隔で溶接し検査する技術の実証を行なってきました。キャニスターは長期間 (10万年以上) にわたって使用済燃料を封じ込めることを目的としており、そのためには溶接部が健全であることが必要であり、溶接や検査の大切さについて理解を深めました。
(4) オスカーシャム原子力発電所3号機
OKG社のオスカーシャム原子力発電所の説明を受けるとともに3号機の視察を行ないました。オスカーシャム原子力発電所3号機はBWR型であり、当初1150MWの出力で許可されたが、2009年には1400MWに出力増加を許可され、現在世界最大級となっています。寿命は60年、稼働率は94%以上です。福島事故後に規制当局である放射線安全機関の指導でストレステストを行い、非常用冷却系の拡張を行なった等の説明を受けた後に、実際に運転中の3号機の原子炉容器上部、タービン発電設備を鉛ガラス越しに視察することが出来ました。
各施設でも感じましたが、作業を含め技術系の女性職員を見かけることも多く感じました。
(5) オスカーシャム自治体とSKB社より地元住民との活動までの道程
SKB社のプロジェクトマネージャから、地層処分候補地選定期間に自治体で行なわれたステークホールダインボルブメント (公衆参加) 活動に関しての説明を受け、SKBと元自治体と住民の関係についてなど総合的に学びました。
3月の幌延深層研究センターの訪問や事前の学習等により、日本との比較も行うことが出来た事で一層の理解を深めスウェ-デンでの経験は、大きな収穫となりました。
2. リトアニア
(1) KAUNAS工科大学
学生の国際力、討議力、英語でのコミュニケーション力の向上を目的とし、カウナス工科大学を訪問しました。双方の大学の紹介、原子力の現状と課題に係る複数のトピックについて、英語でのグループディスカッション及びプレゼンテーションを行い、セミナー後の、研究施設の見学では、カウナス工科大学における最新の研究動向について学びました。
その後の意見交換を兼ねた夕食では、ピザと地元のビールを片手に交友を深め、日の長いカウナスの古い街並みを一緒に散策するなど、楽しいひと時を過ごしました。
(2) 杉原千畝記念館
日本のシンドラーといわれている杉原千畝の記念館を訪れました。第二次世界大戦当時、在リトアニア領事館において領事官代理を務め、ドイツからの迫害を逃れるために、日本を経由し亡命して生き延びようとしたユダヤの人々を助けるため日本国の命令には従わず、独自の判断でビザを発行し、最終的にはおよそ6,000人近い人の命を助けました。その功績にリトアニアの人からは、敬意をもって現在も当時のままの形で領事館が記念館として保存されています。
遠い異国での一人の決断の大きさや苦悩などを、もしも自分だったらどのようにするであろうかと杉原氏の執務室で、皆思いをはせたのでした。
(3) 在リトアニア日本大使 面会
在リトアニア日本国大使、白石和子特命全権大使に面会しました。5月1日は休日だというのにもかかわらず、大使公邸にお招きいただき、リトアニアの新規原子炉導入の動向、欧州連合への加盟等日本とは異なる原子力をめぐるリトアニアの事情や歴史、大使の役割と貢献等の国際的な仕事をする上での御苦労やトピックス等様々なお話を伺いました。
国を代表する立場の責任感や重さを垣間見ることが出来、国際的に活躍する女性のお手本としても大きく印象に残りました。
3. オーストリア
(1) オペラ
ウィーンでは、フォルクスオーパー (国民歌劇場) において、オペラ「カルメン」を鑑賞しました。フランスの作家プロスペル・メリメの原作を元に、ジョルジュ・ビゼーが1875年に初演をして以来フランスの代表的歌劇としてその親しみやすい曲と共に人気のオペラです。
渡航前のレクチャーで、オペラの歴史、楽しみ方、内容等に関しての事前の下調べも行っていたので、全員初めてオペラ鑑賞に緊張しつつもヨーロッパの文化に深く根付いているその独特の雰囲気や内容に親しみ楽しむことが出来ました。
(2) IAEA
IAEA(国際原子力機関)を訪問し、原子力エネルギー局、原子力安全局、安全保障局より、国際原子力機関の各局が、行っている任務や目的、活動についてなどの説明を受けました。
Janice Dunn Lee事務局次長からは、次の世代を担う人材の育成をIAEAも重要と位置付けているといった旨の歓迎と激励のお言葉を送っていただきました。
(2) 包括的核実験禁止条約機関 (CTBTO)
IAEAとは別にUNIDO, UNDCOなどがありますが、CTBTOもその一つで、IAEAとは別の機関です。ここでは、核実験を禁止する条約の成立を働きかけ、各不拡散、核軍縮の呼びかけ、核実験の監視など行っています。これらの活動や、非加盟国への働きかけ等に関しての説明を受け、実際に各国の研究機関から送られてくる観測データパネルの前では、世界が一つになって原子力の平和利用を考えて行かなければならないことを実感したのでした。
(3) 在ウィーン国際機関日本政府代表部 (PMJ: Permanent Mission of Japan)
IAEAに隣接するウィーン代表部は,原子力の平和利用,軍縮不拡散,その他、多岐にわたるグローバルな重要課題を担当する9つの国際機関と日本との窓口となっている機関です。
仕事の内容に加え、国際機関で働く適性や採用のコツ等のお話をいただき、国際的に働くことに関心を持つ学生達は活発に質疑応答を行いました。