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令和5年3月博士課程修了予定者論文発表会 原子核工学コース

対面開催(必要に応じてオンライン中継)

※ お願い :学外の方 (卒業生や現在東工大関係者でない方) へ
聴講ご希望の場合は、まず指導教員にメールでその旨ご連絡下さい。
各指導教員のアドレスは末尾にあります。

令和4年12月19日(月) ゼロカーボンエネルギー研究所 北1号館1階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

13:30
15:30

三星 夏海

相樂 洋

高い固有安全・核不拡散性を有するケイ化物燃料装荷中小型軽水炉の研究

 

中小型炉は、分散型かつ安定的なエネルギー源として期待されており、固有安全を積極的に取り入れた原子炉である。他方、中小型炉に対して従来の大型炉と同等の規制が適用された場合、事業者側に過大な負担がかかることが懸念される。したがって、中小型炉に対する規制には、中小型炉の固有安全と核不拡散性に基づいた等級別アプローチ(Graded approach)を取り入れることが重要である。そこで本研究では、事故耐性燃料の一つであるケイ化物燃料を中小型軽水炉に装荷した場合における、炉心核熱特性および核不拡散性を定量的に明らかにし、それらを活用した高い固有安全と核不拡散性を有する中小型軽水炉システム概念を提案すると共に、技術及び規制上の課題を明らかにした。

令和4年12月20日(火) ゼロカーボンエネルギー研究所 北1号館1階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

10:00
12:00

中野 秀仁

片渕 竜也

Pd-107の中性子捕獲反応に関する研究

高レベル放射性廃棄物の長寿命放射性核種を核変換技術により無害化、短寿命化する研究が行われており、核変換研究を進展させる上で高精度核反応データは必須である。長寿命核分裂生成物の107Pdは測定例が少なく、異なる核データライブラリ間でも評価断面積の差が大きく、広いエネルギー範囲での高精度測定が必要とされている。本研究では、大強度陽子加速器施設の核破砕中性子源からの高強度パルス中性子ビームを用いて107Pdの中性子捕獲断面積を測定した。飛行時間法を用いて熱中性子エネルギーからkeV領域の広いエネルギー範囲にわたって断面積を決定した。また、共鳴解析を行い、500 eVまでの共鳴パラメータを導出した。測定の結果、核データライブラリの107Pdの中性子捕獲断面積の評価値が熱中性子エネルギーにおいて著しく過小評価していることが明らかとなった。

令和4年12月20日(火) ゼロカーボンエネルギー研究所 北2号館6階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

15:00
17:00

篠田 泰成

加藤 之貴

大規模水素製造に向けた多孔質ニッケル支持型パラジウム銅複合水素透過膜の開発に関する研究

低炭素社会の実現に向けた原子力を用いた水素製造では、製造工程において大規模な水素分離と精製が求められる。そこで本論文では、従来のPSA法よりも効率良く連続的に高純度水素を製造できる新規複合水素透過膜の開発を目指した。膜の作製には、パラジウム銅(PdCu)合金薄膜と支持基盤の多孔質ニッケル(Ni)層を電気めっきにて複合化させる、独自に開発した逆ビルドアップ法を用いた。本法により、水素透過能を有するPdCu合金膜厚さを従来の20μmオーダーから、1μm未満の厚みまで薄膜化に成功した。これより、高価なPd材料の使用量削減ができ、低コストな製膜の可能性を示した。さらに、この複合膜の製膜条件の最適化を行い、水素透過機構の解析を行い、従来膜より優れた開発膜の水素透過性能を実証した。

令和4年12月20日(火) ゼロカーボンエネルギー研究所 北1号館1階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

16:30
18:30

土屋 尚代

松本 義久

低線量率放射線照射が細胞生存率に与える影響とDNA二本鎖切断修復機構の関与についての研究

放射線、特にX線やγ線のような低LETの電離放射線による生物学的影響は、一般に線量率が低くなるにつれて小さくなる傾向がある。線量率効果と呼ばれるこの現象は、がんの放射線治療や放射線防護の一つとなっている。線量率効果は照射中に亜致死損傷が修復されることによるものと考えられている。しかしながら、その分子機構には不明の部分が多く、線量率効果とさまざまなDNA損傷修復機構との関係性は明らかになっていない。
本研究は、非相同末端結合によるDNA二本鎖切断修復において重要な役割を担うタンパク質Ku(Ku70, Ku86の複合体)およびDNA-PKcsに注目し、線量率効果の機構の一端を明らかにすることを目的として行った。その結果、Ku70あるいはKu86の遺伝子を欠損する細胞では細胞生存率に関する線量率効果が消失または逆転することを見出した。この結果から、線量率効果にはKuタンパク質が関わることを明らかにした。

令和4年12月21日(水) ゼロカーボンエネルギー研究所 北1号館1階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

10:00
12:00

児玉 有 片渕 竜也 Am-243の中性子捕獲反応に関する研究

核変換システムの設計、燃料計算では、マイナーアクチニド(MA)の中性子核データの高精度化が必要とされている。本研究では、MA核種の一つである243Amの中性子捕獲実験を大強度陽子加速器施設の物質・生命科学実験施設に設置された中性子核反応装置を用いて行った。中性子フィルターを用いてkeV領域の中性子捕獲断面積を測定した。また、飛行時間法により熱中性子からkeV領域までの中性子捕獲断面積を測定した。実験データの解析には波高重み法を適用し中性子捕獲断面積を導出した。共鳴解析を行い、40eVまでの共鳴について共鳴パラメータを導出した。keV領域の中性子捕獲断面積は、過去の測定よりも高い精度で決定された。また、熱中性子エネルギーでは現状の核データライブラリの評価断面積は、今回の測定値に誤差の範囲内で一致することが明らかになった。

令和4年12月21日(水) ゼロカーボンエネルギー研究所 北1号館1階会議室
開始時刻/
終了時刻
発表者氏名 指導教員 論  文  題  目

13:45
15:25

竹山 知志 鷹尾 康一朗

Redox Behavior of Uranyl(VI) Complexes with Redox-Active/Inactive Ligands

(レドックス活性・不活性な配位子を有するウラニル(VI)錯体の酸化還元挙動)

原子力発電に利用する核燃料の製造や使用済み核燃料の再処理プロセスにおいて、ウランの錯体化学と酸化還元反応は、重要な役割を担っている。遷移金属錯体では、錯体の酸化還元反応は中心金属でのみ起こるのではなく、配位子も酸化還元に関与しうる。そのため金属錯体の酸化還元反応を単に中心金属の酸化数変化として理解することは必ずしも適切ではなく、錯体全体の反応として捉える必要がある。しかしながらウラン錯体の酸化還元反応では、未だに中心金属の酸化数変化のみに注目しているのが現状である。本論文では、実験的手法と計算化学的手法を組み合わせ、ウラニル(VI)錯体の酸化還元反応を錯体全体の反応として理解することを目的として、配位子の分子設計、ウラニル(VI)錯体の合成とキャラクタリゼーション、電気化学および分光電気化学的手法を用いた酸化還元挙動の解明、および新規反応性の創出を行った。その結果、ウラニル(VI)錯体は「ウラン上で酸化還元が起こり得る錯体」と「配位子上で酸化還元が起こり得る錯体」に大別でき、これら両方の酸化還元挙動を包括的に調査することで、ウラニル(VI)錯体の酸化還元中心を決定する要因を明らかにした。また、配位子に適切な置換基を導入することで、錯体の酸化還元中心をコントロール可能であることを見出した。さらに、配位子上で起こる酸化還元反応に基づく新たな物質変換系の構築にも至り、ウラニル(VI)錯体の酸化還元反応の新たな側面を切り拓いた。

【 聴講希望ご連絡先 】 送信時には(at)を@に置き換えて下さい。
・加藤 之貴  教授  : yukitaka(*)zc.iir.titech.ac.jp
・松本 義久   教授  : yoshim(*)zc.iir.titech.ac.jp
・片渕 竜也   准教授 : buchi(*)zc.iir.titech.ac.jp
・相樂  洋   准教授 : sagara(*)zc.iir.titech.ac.jp
・鷹尾 康一朗 准教授 : ktakao(*)zc.iir.titech.ac.jp