東京工業大学 21世紀COEプログラム 世界の持続的発展を支える革新的原子力
  原子力とは 原子力の必要性 原子力の問題点COE-INES ロードマップとは

3.原子力の問題点はなにか?

 原子力利用に固有の問題点は基本的には

@ 安全性     A 廃棄物     B 核拡散
です。

@ と A については、原子炉の中で元のウランより寿命の短い放射性物質が生まれていることが原因になっています。

 

安全性

 原子炉の安全性に関しては、どのようなことが起こっても、放射性物質が外に出て、一般公衆の被曝が起こったりしないようにすることです。

  安全性に関しては、既に多くの経験を有しています。原子炉はその運転を止めれば問題も無くなります。また安全の程度は次に述べる廃棄物のように積算運転時間に比例して増加することはありません。この意味では他の2つの問題より扱い易いといえます。

廃棄物

 廃棄物に関しては原子炉の運転が終わった後、処分した廃棄物中の放射性物質が公衆に取り込まれたりしないようにすることです。この場合、放射性廃棄物の半減期はウランより短いとはいえ、人間の歴史と比べ非常に長いのが問題です。

 廃棄物の問題は原子力利用をしなければ発生しませんが、一旦利用を始めると発生し、利用を止めても極めて長期間にわたって存在します。その量は原子炉の積算運転時間に比例しており、今はそれほどでなくても、原子力利用を続けるうちに、どんどん増えてくるという厄介な問題です。

核拡散

 核拡散に関しては、原子炉の平和利用といえども、原爆と共通の多くの技術を使っていること、及び原爆の材料と似た材料を扱うことに問題があります。再処理や濃縮をしなくてもよい原子力利用や、原爆の材料にしにくい燃料を使うという技術的な工夫が考えられます。また、管理と技術をうまく組み合わせたシステムの開発も重要です。

  核拡散に関しては原子炉の運転を止めても問題は無くなりません。これは原子力を利用しないことにしても、問題のある核兵器が作られないように管理を行わねばならないということを意味しています。

人とのかかわり

 原子力の問題点として技術的なものを述べましたが、今まで原子力平和利用で起こった問題の殆どは人間の誤り(意図的な行為もある)に起因しています。原子力の技術が発展したとしても、これを扱う人間を無視してちゃんとしたシステムの成立はありえません。これはいくら強調してもしすぎることはないでしょう。誤りをできるだけ起こさない人間側システムと、例え誤りを犯しても大丈夫な機械側のシステムの構築を両側から推進していく必要があります。

  人間側のシステムに関し、多くの組織的な不祥事がマスコミを賑わせています。これは原子力にとって重大な問題です。

  原子力が社会からまだ十分な信頼を得ていないということも重要な問題だと考えています。