ロードマップと提言
最近のIPCCでの報告でも指摘されているように今世紀の人類的課題は温暖化問題であり、既に異常気象が問題になりつつあります。このためにはCO2排出量を大幅に減らす必要があります。原子力エネルギーはこのための大きな可能性を秘めていますが同時に安全、廃棄物、核拡散の難しい問題を抱えています。
私たちはこれらの問題を解決することにより原子力を利用して今世紀の人類的課題を解決しょうと考えております。ここでは人間は誤りをしがちなものであるという考えにたち、人間の関与をできるだけ少なくし、例え誤りがあっても重大な結果をまねかないようなシステムを追求しています。このためには革新的なアイデアを取り入れた原子力の研究開発が必要と考え、次のような研究を実施 しています。
- CANDLE燃焼炉、鉛合金炉、熱エネルギー利用システム
- 核拡散抵抗性の高いプルトニウム燃料利用、廃棄物の分離技術
- 原子力パーク構想
我々のマンパワーは少なく、網羅的な研究はできず、十分とは言えませんが、これだけでも20年後にかなりの成果を挙げることが出来れば、原子力は現在に比べてかなり受け入れやすいものになると考えています。我々の計画では2020〜2030年頃までに具体的な将来展望を示し、それ以降実用化への工学的試験へと進むことを考えております。
我々のロードマップは大学の研究活動が主体であり、いわゆる国の長計等とは異なります。国の計画では実現可能性が極めて高いものが要求されます。これに対し大学の研究では発見や発明が期待されるわけで、このようなものは何時実現するということを確約できません。この意味で、ロードマップには時間軸を示しておりますが、一応の目安であるとお考え下さい。

現在の原子力は十分に社会に受け入れられていないという方もおられます。これは原子力開発を開始したとき、あまりにも急ぎ過ぎたことに大きな原因があるように思います。我々はそのスタートの時点から社会の理解を得ることに十分な時間をかけ、社会と共進するかたちで研究開発を進めてまいりたいと考えております。
(ロードマップ第 8 章 要旨)
(関本 博) |