21世紀の展望
人口とエネルギー需要
21 世紀は人口の増加と共にアジアを中心とした途上国の経済発展が見込まれています.エネルギー消費は 2050 年には現在の 2 〜 2.5倍程度、 2100 年には3〜5倍程度増加すると予測されています.現在先進国は途上国の一人当たり約6倍程度のエネルギーを使っていますが、今後人口減少傾向を考えると減少又は多少の増加程度に止まると予測されます.一方途上国は人口増加以上に、最近の中国・インドのように経済成長に伴い急速な生活レベルの向上が見込まれ、この為エネルギー消費の増加が予測されます.一方温暖化問題は大きな人類生存の課題として顕在化してきました.
資源と環境
短期的には原油価格の高騰などが 問題になると考えられますが、中長期的には天然ガスや石炭もあり価格問題はありますがエネルギーがなくなるということはないと考えられます. むしろ主要課題は地球規模の温暖化問題と思われます.世界平均気温を現在より 2.5 ℃ 程度の上昇に抑えるには現在 380ppm である大気中 CO 2 濃度を 550ppm 程度に制限する必要があるといわれています.更に 2 ℃ 以下に制限する可能性も指摘されその場合大気中 CO 2 濃度は 450ppm 程度に制限する必要性もヨーロッパを中心に議論されています.これにより化石燃料の使用は大幅に制限されます.温暖化問題の解決には消費エネルギーをできる限り抑える(途上国への技術移転と省エネルギー技術開発)事と CO 2 排出の少ないエネルギー源の多用が望まれます.
温暖化対策の制限
2100 年時点での温暖化防止のために世界のエネルギー消費増加をかなり抑えた 300 億トン供給の一例を示します.世界の一人当たり年間平均エネルギー消費は 3.3 トン(石油換算)ですが、これは我国の 1973 年頃のエネルギー消費程度です. CO2 制限から化石燃料は現状の約 50~100 %の 30 〜 70 億d(石油換算、以下省略)に制限され、化石燃料を利用するが排出される CO 2 を回収・固定・地中処分する方式( CCS )は最大見込んで 50 億d相当で約 15 %程度でと見込まれます.化石燃料全体では 80 〜 120 億dで残りの 220 〜 180 億dは省エネルギー、再生可能エネルギーと殆ど CO 2 を排出しない原子力とで賄う以外にないことになります (COE-INES ロードマップチームによる分析 ) .
再生可能エネルギーと原子力
再生可能エネルギーは好ましいエネルギー源ではありますが、エネルギー密度が原子力の 100 分の一以下と低く量的にも経済性からも供給量は限界があります.太陽光、バイオマス、ごみ処理、水力などを含めて 20 〜 25 %程度が現実的な最大と考えられます.原子力発電は 2100 年時点で 1 次エネルギーの 25% 程度( 5000GWe 相当)の役割は望まれます.また原子力エネルギーの発電以外に熱利用系への適用は環境対策上有力な選択肢と考えられます.
まとめ
将来を予測することは種々の不確定な要素があり不可能なことを試みるとの意見もあります. しかし詳細な 議論は無理にしてもある程度の予測をし、それに従って将来への準備をすることは人類の生存が掛かる環境・エネルギー問題では意義があると考えられます.
いづれにしても、中長期的展望では環境問題が人類的課題であり、先進国の人々が「豊かさは無駄なエネルギー消費を控えること」にある等との価値観を変えることが望まれます.またバイオマス、風力、太陽光発電等再生可能エネルギーの技術開発によって、より安くエネルギー供給が出来るよう努めること、そして原子力はより安全性を高める技術開発と人々が安心出来るよう信頼感の醸成に努めることが強く求められています.
2005 年エネルギー供給(約 112 億トン)
IEA Energy Out Look
2100 年エネルギー需給予測例(約 300 億トン・石油換算)
(ロードマップ 第 4 章 要旨)
(田下 正宣・松井 一秋) |