東京工業大学 21世紀COEプログラム 世界の持続的発展を支える革新的原子力
  原子力とは 原子力の必要性 原子力の問題点COE-INES ロードマップとは

5.そのためのロードマップとはどのようなものか?

核変換

−核不拡散と核廃棄物の低減を目指して−

 原子力の平和利用を地球規模で円滑に進めて行くためには、平和利用を担保するための国際的な取り決め(「保障措置」や「核物質防護措置」等)の遵守はもとより、核軍縮や国際的な核不拡散体制維持・強化に積極的に貢献してゆくことは、重要ではありますが、これらは、基本的には国際的信頼性に基づく約束ごとであって、それだけでは、核不拡散の問題の根本的な解決策にはなりません。国際的な破壊行為をする集団(テロ集団)や国家に対しては何の効果もありません。もっと重要なのは、核物質そのもの自身が、強い物理的な核拡散抵抗性(軍事利用に対して強い抵抗力)を有することであり、平和利用以外には物理的に転用不可能な核物質に変換することであります。

 例えば、プルトニウム−239は軍事転用され易い核物質でありますが、同じプルトニウムの仲間であるプルトニウム−238は、プルトニウム−239と核拡散抵抗性の観点から比較すると、約 300 倍の熱を自ら自然に放出します。また、約 13 万倍の中性子を自然に放出します。このような特性をもつプルトニウム−238は、プルトニウム−239とは同じプルトニウムの仲間ですが、核拡散抵抗性が高く、原子力エネルギーとして平和利用には使えますが、軍事的転用が非常に困難な核物質です。

 それでは、原子力エネルギーとして平和利用にしか使えない核拡散遅効性の高いプルトニウム−238は、どのようにしたら作れるか?それは、現在、多くの国々で、高レベル放射性廃棄物として取り扱われているマイナーアクチニド(ネプツニウムやアメリシウム等)を原子炉の中に戻して燃やすと、この貴重なプルトニウム−238を作ることが出来ます。このように、この研究は、「核のゴミ」として取り扱われている高レベル放射性廃棄物(マイナーアクチニド)は、実は、単に厄介な「核のゴミ」ではなく、寧ろ未来の人間社会にとって新しい社会的・経済的価値を生み出す貴重な「財産」であることを実証する研究でもあります。

 この研究は、国際原子力機関( IAEA )でも高く評価され、 IAEA が世界の専門家を集めて、この研究に関する IAEA 諮問会議を 2 回開催しています。( 2003 年 6 月及び 2006 年 6 月)

 この「核のゴミ」が原子力エネルギーとしての平和利用にしか使えない「貴重なプルトニウム−238」に変わるメカニズム(仕組み)をもっと知りたい人は、このホームページの更に先に進んでください。そこには、新しい未来の原子力の世界が見えてくるでしょう。

 

図‐1核不拡散と核廃棄物低減を目指した新しい原子力構想例

(ロードマップ第 5 章  5.2.1  要旨)
(齊藤 正樹)